呼人さんにはどんな曲をオーダーしたんですか? 初心を思い起こさせるような歌詞になってますよね。「幼い頃描いた 夢は幾つ叶えられたんだろう」っていう。
僕から呼人さんの楽曲の中でこういう感じの曲をお願いしたいっていうお話をさせていただいたうえで、お互い歳をとった中で表現できることがあったらいいなっていうのを呼人さんなりに探ってくれたみたいですね。
だから、出来上がった曲を聴いたときに、疾走感のある、まさに僕が思い描いていたとおりの曲だったし、歌詞の中の、今の年齢だからこそ思う「人生は孤独を生きてくレースだ」っていうフレーズはすごくいいなって感じて。今回、呼人さんに会ったときにLINE交換してやりとりするようになって。
曲を聴いた感想だったり、ここでこういうのを入れたいっていう話だったりをしていって。
いままではどちらかというと、一方的に世界を作ってもらっていた感じだったので、今回は初めて細かくコミュニケーションをとりながら作り上げていったっていうところが大きくて。それはすごく嬉しかったですね。
それはデビュー当時とは一番違う点かもしれないですね。
僕は本当に、今でもそうですけど、素人ですからね。デビュー当時、僕の作った曲をアレンジしてくださるんだけど、自分なんかがと思ってしまって何も言えない(笑)。今回も「言っていいのかなー」って考えたりもしたんですけど、自然にやりとりができるようになったのは変化ではありますね。
歌詞に「幼い頃の夢」ってありますが、かつての自分を考えたりすることはありますか。デビュー前自分がどんなことを考えてたとか。
そんなに考えないというか、人間なんてそう大きく変わるものじゃないなって思ってますね。
デビュー前の自分と今の自分は違う自分になってるかっていうと、まったくそういうことはなくて。
当然、経験することで学習することもあるし、変わっていくこともあるけど、変わらない自分もいる。
すごく華やかな世界に飛び込めば、自分を変えてくれるんじゃないかっていう、他力本願みたいなところからこの業界に入ったので、入ってから自分で変わらなきゃいけないんだって思い知らされたし(笑)。
もっともっといろんなことにアンテナを張って、いろんなことをしておけばよかったなって思うこともあるけど、今の自分がその頃の自分に戻れたとしても、きっと同じように無駄な時間の使い方しかしないだろうなと思うので(笑)。
まあでも、そんなに将来の夢を持ってるような人間じゃなかったですけど、ギターを高2で手にしたときにギタリストになりたいって、少年野球やってる子がプロ野球選手になりたいって思うように、そういう夢を抱いて。
いまだにギターを弾ける場所があるっていうのはありがたいと思います。
最初に音を出したときの興奮みたいなものは今も変わらないですか、楽しさというか。
うーん……あの頃の熱量のままかって言ったらそんなことはないですよね。
経験を積むことでできることはどんどん増えますよね。
いや、もう、どんどんは増えないですよ。
むしろ「あれ、こんなに指動かなくなったんだ?」って(笑)。
筋力も衰えるし、記憶力も衰えるし、外見だって劣化していくのと同じで、ギターも衰えていくんだって思ってますもん。
ただ、単純にギターを弾いてると、ギターの音を聴いてると楽しいっていうか、嬉しいっていうか。そういう気持ちはいまだにありますけどね。何も知らないなかで初めて出会うものっていうのは、やっぱり大きいじゃないですか? 僕の場合は初めて出会ったバンドがBOØWYで、布袋(寅泰)さんに憧れてギターを始めて。ちょうど夏休みになるときだったから、1日8時間ずっとギターばっかり弾いてて(笑)。
そういうのって今はなかなかできないことだから。
あ、でも、釣りに行ったら1日8時間以上余裕で釣ってますね(笑)。
なかなか大人になって夢中になれることってないですから。
だから、そういうときにやっとかなきゃいけないこと、出会っておかなきゃいけないことっていうのはあったんだなって思います。
一方で、2曲目の「Eぜ」は初のタッグとなる、OKAMOTO’Sのオカモトショウさんにお願いしてます。
ディレクターから「若い才能と一緒にやるのはどうですか?」っていうアイデアをいただいて。OKAMOTO’Sさんの曲を聴いたり、MVを観てみたら、すごくカッコいいっていうか、数あるほかのバンドとは違う、異質なバンドだなと感じて。
面白そうだとお願いしたら快諾してくださって。OKAMOTO’Sさんってメンバーが集まって一発録りをすることが多いということで、僕もレコーディングにギターで参加したんです。考えてみたら、当然呼人さんもジュンスカ(JUN SKY WALKER(S))なんですけど、バンド自体と接したのは初めてだなと思って。しかも、バンドの一発録りのレコーディングっていうのも初めてで。
それはすごく楽しい経験でしたね。
20年近くやっててもまだ初めてのことがあるんですね。
まあ、僕の音楽活動っていうのはほかのミュージシャンの方とは違って、役者をやりながらなのでね(笑)。
OKAMOTO’Sさんはホントに見てて微笑ましいというか、仲がいいっていうか。
もしかしたら、いろんなことがあるのかもしれないですけど、中学時代からの同級生なわけで、それって夢じゃないですか? 僕も高校のときにコピーバンドを組んで。
それはすごく楽しかったし、続けていけたらと思っていたけど、文化祭が終わったら、みんな受験だってバラバラになってしまったし(笑)。
でも、OKAMOTO’Sさんはそこからずっと繋がってるわけじゃないですか。それはすごいことだなと。
OKAMOTO’Sも過去と現在というテーマで書いてますね。
それはきっと、僕のことを思って、年齢のことを考えてくださったんだと思います。初めて聴いたときにびっくりしましたけど、「ビフォ〜」って(笑)。
すごい新鮮ですよね(笑)。
「なんだこりゃ!」って驚きました。だけど、すごくシンプルでカッコいい曲に仕上げてくれたなって思います。それと、ショウさんのキャラクターっていうのが、アーティスト気質っていうか。
ロックスター然としてますよね。
僕、エアロスミスの『パンプ』がすごい好きなんですけど、メイキング映像でスティーブン・タイラーが圧倒的なんですよ。どこか、それと重なる部分があって。これがアーティストなんだって思いましたね(笑)。
さらにもう一曲、シライシさんによるロックンロール「EXCLUSICE」が収録されていて。1stアルバムまでをプロデュースした呼人さん、2ndアルバムから携わっているシライシさん、そして、20代のバンドマンと作った一枚が似合うライブハウスツアーがスタートするわけですが、ツアータイトル〈~原点回帰 k.k.w.d. tour~〉の意味をお伺いしてもいいですか? いくら考えてもわからないんです。
いや、全然たいしたことないですよ。ツアーのMCでその話をして、みんなが苦笑するっていう画まで見えてます(笑)。
じゃあ、ライブハウスに足を運ばないとわからないんですね。
そうですね。ツアータイトルを考えてるときに、今回はやっぱり、“原点回帰”って言葉が出てきて。漢字4文字でカッコいいなとは思ったんですけど、ちょっと物足りない感じがして、無理矢理くっつけたのが、“k.k.w.d.”なんですよ。
じゃあそこはMCを楽しみにしてます! 最後に16年ぶりのライブハウスツアーに向けた意気込みを聞かせてください。
お客さんとの距離感がすごく近かったような気がする、みたいな(笑)。本当に一番最初に回ったツアーでは、ステージ前のすぐそこにお客さんがいるっていうハコもあったので、そういう距離感にまず戸惑っちゃうかもしれないですね。まだ、どうなるか想像がつかないんですけど、僕的にはいろいろドラマや舞台で忙しくしていたストレスを発散する場所だとも思っているので(笑)、ご褒美のつもりで楽しめるといいなと。もちろんみなさんに見せなきゃいけないクオリティを考えると責任はあるんですけど、それ以上にまずは自分が楽しみたいなと思ってます。
みんなも日々の鬱憤やストレスを晴らしにくるんじゃないですか(笑)。
デビュー当時から応援してくださっている方々は、デビューのときから比べると僕もみんなも年月が経っているのでお互い無理しないようにしましょう(笑)。もちろん昔から応援してくださっているファンの方々だけではなく、最近の作品でファンになってくださった方々にもたくさん来て欲しいですね。みんなで楽しめたら嬉しいです。 |